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潮騒の島

 地元のマリコン(海洋土木)K社のK常務と鳥羽港で待ち合わせ、神島行きの定期便に乗り込んだのが朝10時前。
港のケーソン解体の事前調査はすぐに終わり、11時過ぎの帰り便に乗船する気にはなれず次の15時便迄散策を決めこんだ。
 作業服なので測量の写真でも撮っているのだろうと怪しまれることもない。建て増しした違法建築物のように徐々に広げられたと思われる不規則な路地裏は迷宮のようでもあり、突然目の前に広がった墓地は、海を舞台にみたてたアーチ状の観客席のようでもあり、墓石というのは人間の姿のようでもあるなと、ひとり納得した。
 この日わたしはこの島は正しく島であると認識した。橋の出来た島はもはや島ではないと考えたからである。ご先祖達が外部との接触を嫌い、わざわざその土地に根付いたとしたら、橋とかトンネルというのは彼らに謂わせれば、「おいおい、奴らが来るがな。いかんがな」ということになるだろう。土着となったその魂は失望の橋を渡って何処かへ消えてしまわないか。
 帰りの便迄もう少しある。焼き飯を肴に酒を飲み、K常務、職人さん達と乗船した。鳥羽港を寝過ごしてしまい、終点の小さな港でほろ酔って途方にくれていると、K常務が笑いながら車の窓越しに私を手招いてくれていた。

ジュンク西村

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