photographer says

目的は同じなれど

 大切な人に会う前のように、年甲斐もなく少しわくわくしながら床につく。まだ外は暗いが、逸る気持ちを抑えられずいつもより早く起き上がり、冷たい井戸水で顔を洗ったあとは長年欠かさない乾布摩擦。炊き上がったご飯をお鉢に盛り神棚にお供えしたら、もう一度近鉄電車の連絡を確認。三日前に箪笥から取り出してあったもののまだ少し樟脳の匂いが残る、三十年近く愛用の背広に袖を通す・・・・伏見稲荷の鳥居の前にて、奥さんであろう老婦人のカメラのレンズを凛とした姿勢で見つめるおとうさんから浮かんだ想像の光景。
 一方、前日は先斗町で遅くまで浮かれ、盛り場も野外キャンプもこの日のお参りも同じ、ダウンジャケットにジーパンとういうふざけた出で立ちのフラフラなオレ。
 背広は古くともパリッと正装したおとうさんの真摯な佇まいを目にした後、欲深いお願いをすることは何か申し訳なく、手だけを合わせるにとどめた。

ジュンク西村


*先日、大変お世話になったEP−4の好機タツオ氏が亡くなった。心よりご冥福をお祈り致します。

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