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草草日記

帰省時、“四季の山菜”というカラー写真図鑑を小脇に抱え裏山や畦道を散策した。
 オオバコ、タンポポ、ノカンゾウ、ヒメナ、ユキノシタ、カラスノエンドウ、アザミ、ハルジオン、踏みつけてきたこれらが食えるのか、と知ると畦道もついつい慎重に歩いてしまう。野良仕事中のおばちゃんに聞くと、そんなものは食べたことはないが、スイバは子供の頃塩をかけて生で食していたという。
 チーやん(www.nimaigai.com/pc/mansuri/jyunku/07/index.html)なら詳しいかもしれぬと思い訪ね、日当たりのよい丘を二人で歩いた。スイバはやはり生で塩をかけて食べていたという。今もたまに頂くという白く小さな花の群生はハコベだった。林に入り、“この木は臭いから匂ってみい”といわれた木は雑巾のような不快な臭いがし、“これは防虫かなんかに使っていたに違いない”と思い尋ねたが、特に理由はなく、ただ臭いというだけだった。“臭かろう”と、チーやんは何故か少し嬉しそうににやける。
 丘を少し駆け上がったところにモグラが死んでいた。首に一点の咬まれ傷がある。“こりゃあ工藤の猫(いつも腹を空かしている)が殺したんじゃろ”“何でか知らんが猫はもぐら食べんけえなあ”と言う。オレは“あっ!”と一つのことを思い出した。ガキの頃、隣の朽ちた廃屋で秘密基地ごっこに明け暮れていた頃、その玄関先に死んだモグラを見つけた。翌日それは二匹となり最終的に四匹が等間隔に並べられた。この不可思議な行為は猫の仕業だったのだ。猫はよく雀などを獲ると食べる前に飼い主に成果を見せる。その猫も、獲ったはいいが食えないそれをせめて誰かに見せたかったのだろう。
 帰宅し、昼飯代わりに採った野草をてんぷらにしてウイスキーを飲んでいると、猪ハンターのひろちゃんが来た。オレは、皆は知らないだろうがこれらはただで食えるご馳走であることを少し得意げにひらかす。するとこのおじさんは間髪を入れず、先日村の草刈の後公民館で山菜を揚げて一杯やったが、ネタがなくなったので横の花壇のパンジーの花をてんぷらにし、これが実にうまかった、と持参のワンカップ焼酎にオレのウイスキーを少し垂らし、“おまえそんな本持ってなにしちょんじゃ”というような口調で語った。

ジュンク西村

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