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Gate Crasher 2011正月 続編


 このコラムであまりにオレが度々帰省し田舎のことを書くので、よほど故郷を偲び想っているのだろうと読んで頂いている方はお思いであろう。そうかもしれない。しかし、オレが会いたい人間なんてのはごく僅かであり愛しいのは、変哲のない畦道であり、そこに生える雑草であり、くそボケのやった農地整備に伴い上半身がU字溝になってしまった川であり、そこを泳ぐハヤやくさ亀であり、人間ではない。駅でしか食えないコシのないうどんであり、秋吉の湧き水で育った川魚の背ごしであり、猪やワラビであり、人間ではない。炭鉱住宅の跡地であり、もう誰も使わず雑草の生えたグランドであり、朽ちた駄菓子屋であり、人間ではない。村をうろつき、それらをじっと見つめ、あるいは食しながら、一緒に酒でも飲んでみたかったもうここには、この世にはいない人々を思い出し偲んでいるだけである。この単純な一連の動作と思料に大きな安堵感を覚えるから帰るのだ...。
 云々、この一見純朴なエピローグは実は愚痴である。というのは...前回号での田舎でのオレの行動に一軒の家からクレームがつき、母親が菓子折りを手に謝りに行ったそうである。田舎に帰ると酒の度が過ぎるのは認識しているがオレは“なんで謝りに行ったんじゃ!廊下で小便したんでもあるまいに!(以前嫌いな親戚でやったから)”と電話で怒鳴ってしまった。オレとしては逆に正月を盛り上げるくらいの気持ちで演技半分だったのだが。しかしその後で、前回文頭に書いたいきなり登場の炭鉱夫のおじさんの持つ、許される人徳のようなものがオレにはないんだろう、オレはそのようなタイプではないんだなと自分の足りなさを恥じた。あのおじさん、お茶目だったもんな。いや、でも待てよ。この現代において、おじさんといえどオレと同じ扱いかもしれんよな。いや、そんなことはない。あのおじさんのお茶目さは時を超えてたもんな。時代のせいにしたらいけねー。

ジュンク西村


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